皆さん、こんにちは!
太陽監査法人 東京事務所 スーパーバイザー 小俣 志穂 です。
現在は、社会福祉法人を中心としたパブリック業務のほか、上場企業や投資法人の監査にも携わっています。今回は、私が特に魅力を感じている『社会福祉法人の監査』について、仕事と育児を両立してきた経験も交えながらお話しします。

皆さんは「社会福祉法人の監査」と聞いて、どんな仕事を想像しますか?
少し堅そう?専門的で難しそう?――ー実はその先には、保育、介護、障害者支援、地域の相談窓口など、私たちの暮らしにとても近い世界が広がっているのです。
私が社会福祉法人の監査に惹かれた理由
私は当初、社会福祉法人は『監査対象の一つ』として何となく知っている存在でした。けれど、ある出来事から自分自身が支えられる側になったことにより、社会福祉法人は「誰かの生活に寄り添い、働き続けたい人々の日常にも関わっている存在なのだ」と、グッと身近に感じるようになったのです。
その出来事とは、
育児休業から仕事に復帰する準備の中で出会ったファミリーサポートセンターでした。
復帰前、埋まらなかった『最後のパズルのピース』
仕事と育児を両立するために、一日の流れを何度も頭の中で組み立てていた頃のことです。朝は子どもたちの支度、保育園への送迎、自分の出社。帰宅後はお迎え、夕食、洗濯、宿題確認、寝かしつけ。何度シミュレーションしても、どうしても埋まらない時間がありました。
それが、長女のスイミングスクールのお迎えです。小さな予定のようでいて、そこが埋まらない限りは自信を持って仕事に戻ることができませんでした。私にとっては、復帰に向けた生活設計の『最後のパズルのピース』でした。
そのピースを埋めてくれたのが、自治体の案内で見かけたファミリーサポートセンターでした。
調べてみると、その運営には、社会福祉法人の一つである社会福祉協議会が関わっていることを知りました。これまで何気なく目にしていた地域の福祉の仕組みが、自分の暮らしを身近で支えるものとして立ち上がってきた瞬間でした。
保育園や習い事の送迎、帰宅が遅くなった時の預かりなど、働く家庭を支えるための仕組みが地域の中にある…そのことを知った時、仕事に戻る不安が少し軽くなっただけでなく、社会福祉法人の仕事を身近に感じるようになりました。
この経験を通じて、社会福祉法人は、地域で暮らす人たちの日常を支える存在であり、その活動を制度や会計の面から支えることに大きな意義があるのだと実感しました。
復帰後、社会福祉法人の監査に関与することを決意
会計監査と聞くと、
金融商品取引法の監査(いわゆる上場企業の監査)や会社法監査など、一般事業会社の監査をイメージする方が多いのではないでしょうか。
ですが、会計士が関わるフィールドは私たちが想像しているよりもずっと広がっています。
私自身、子育てを通じて、世の中はさまざまな支え合いの仕組みによって成り立っているのだと気づかされました。だからこそ、復帰後は「自分が支えられた分野に、今度は監査という立場で関わりたい」と考え、社会福祉法人の監査を希望しました。
実際に担当してみると、
会計や制度の専門性だけではなく、法人の事業内容や地域社会での役割を理解することの大切さを日々感じました。知れば知るほど奥深く、さらに関わっていきたいという気持ちが強くなっていきました。
こうして、ついに社会福祉法人の監査の主査に挑戦
主査とは、チームをまとめ、クライアントと対話し、現場を統括し監査全体の品質を高めていく役割のことです。インチャージと呼ばれたりもします。
責任は大きいですが、その分、監査の面白さをより近くで感じられるポジションでもあります。
ただ、産休・育休、そして復帰後の時短勤務の期間は子育てとの両立を優先し、しばらく主査業務からは距離を置いていました。監査の現場には関わり続けていたものの、主査業務を離れて気づけば10年近くは経っていました。
そんなある日、「社会福祉法人で主査を担当してみないか」とお話を貰いました。
「嬉しい。やってみたい…」
でも次の瞬間には、頭の中の“慎重派の私”が、ものすごい勢いで話し始めました。
- 10年近く主査業務から離れていたけれど、本当に大丈夫?
- やりがいがある分、難易度も業務量も上がるよね?
- 子どもたちが明日から急に自立する魔法、どこかに売っていないかな?
出てくる、出てくる。不安の引き出しは驚くほど収納力抜群でした。
それでも、心の中で最後に残ったのは、「やっぱり挑戦してみたい」という気持ちでした。
家族に相談し、業務の進め方についても周囲に相談しながら、時短勤務をフルタイム勤務に変更し、社会福祉法人の監査で主査を担当することにしました。大きな決断でしたが、ひとりで抱え込まず相談できたことにより、一歩を踏み出すことができました。
「できるかどうか」だけで考えるのではなく「どうすれば挑戦できるか」を周囲と一緒に考えられたことが、大きな支えになりました。ライフイベントは、働き方を見直すきっかけであると同時に『自分らしいキャリア』を考えるきっかけにもなると、そう思います。
数字の向こうに、人の暮らしが見える監査
社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です。利益追求を目的とする一般事業会社とは異なり、社会福祉や地域福祉の発展という高い公益性が求められます。
例えば、ひと昔前は『高齢者福祉・子育て支援・障害者支援』といった課題を、それぞれ別々のものとして捉えることが多かったかもしれません。けれど今は、一人の人や一つの家庭の中に、いくつもの課題が重なっていることがあります。
親の介護をしながら子育てする人、地域とのつながりが薄い中で生活に不安を抱える高齢者、支援を必要としていても自分から声を上げにくい人。社会福祉が向き合うテーマは、年々身近で、複雑で、多様になっています。
こうした中で、社会福祉法人には、単に福祉サービスを提供するだけではなく、地域の中で必要な支援を見つけ、関係機関と連携し、安心して暮らせる仕組みを整える役割が、より一層期待されるようになりました。
そこで、社会福祉法人がこれからも地域福祉の重要な担い手として信頼され続けるためには、法人運営の透明性を高め、ガバナンスを強化し、社会からの期待に応えられる体制を整えることが欠かせません。
その流れの中で行われたのが、社会福祉法人制度改革です。
その改革の一つとして、一定規模以上の社会福祉法人には、外部専門家である会計監査人による監査が求められるようになり、2017年度からスタートしました。地域の暮らしを支える社会福祉法人であるからこそ、その活動を伝える財務情報には信頼できる土台・保証が必要なのです。
そんな社会福祉法人の監査の魅力は、
『専門性』と『社会との近さ』を同時に感じられることです。
朝、子どもを保育所に預ける。休日には、地域のイベントへ参加する。家族の介護について相談し、病院や福祉施設で支援を受ける。普段はあまり意識しないかもしれませんが、私たちの暮らしのすぐそばには、社会福祉法人が関わっている場面がたくさんあります。
保育所、老人ホーム、障害者支援施設、病院、社会福祉協議会。名前を並べると一見ばらばらに見えますが、その共通点は、どれも地域で暮らす人の『日常』を支えているということです。
だからこそ、社会福祉法人の監査では、会計基準や制度を理解するだけでは十分ではありません。その法人がどのような地域で、誰に向けて、どのようなサービスを提供しているのか。現場の実態や法人ごとの特徴を想像しながら向き合っていくことが非常に大切となります。
例えば、同じ『施設』といっても、保育所、高齢者施設、障害者支援施設では、そこで過ごす方々の生活や働く職員の方々の動きも大きく異なります。病院を運営する法人であれば、医療と福祉の両方に関わる場面もあり、事業の内容を理解することが、会計処理や監査上の着眼点を考えるうえで重要です。
こうした背景に触れながら監査を進めることで、数字の意味を“より立体的に”捉えることができます。
中でも、
私が「知れば知るほど奥深い」と感じているのが、社会福祉協議会です。
社会福祉協議会は、1908年に一万円札でおなじみの渋沢栄一が初代会長となって創設した『中央慈善協会』を前身とする、歴史ある社会福祉法人です。都道府県や市区町村にあり、以下のような役割があります。

まさに、地域の“福祉のハブ”なのです。
活動内容も幅広く、福祉に関する相談、ボランティアや市民活動の支援、共同募金運動、子育て支援サービス、介護サービス、学童保育所の運営などなど。公共施設内の売店も実は社協が運営していることがあります。知れば知るほど「こんなところにも社協が!」という発見があるのです。
太陽では、福祉施設などに加え、社協に対する監査業務にも携わっています。
同じ社会福祉法人でも、法人ごとに事業の内容、地域で担う役割、監査上の着眼点も異なります。それゆえに毎回新しい発見があり、学び続ける面白さがあります。調べたり考えたりすることは多く、簡単ではありませんが、だからこそ専門家としての見方が深まっていく手応えがあります。
太陽には、全国で社会福祉法人の監査に携わる仲間がいます。判断に迷うことがあれば、東京事務所だけではなく、他拠点のメンバーとも相談し知見を持ち寄って解決しています。
社会に近い分野であるからこそ、専門性を一人で抱え込まず皆で高めていける環境があることは、安心して挑戦できる理由の一つです。
一般事業会社と違うからこそ、面白い
社会福祉法人の監査の面白さの一つは、一般事業会社の監査で身につけた知識を土台にしながらも、少し違うルールや考え方に出会えることです。最初は「似ているようで、やっぱり違う!」と感じる場面も多くありました。
社会福祉法人の組織を三つの目で支える仕組み
社会福祉法人には、
大きく三つの機関がそれぞれの立場から法人運営を支えています。
- 法人運営に係る重要事項の決定を行う『評議員会』
- 日々の業務執行の意思決定、理事・理事長の職務の監督を担う『理事会』
- 理事の職務執行を監査し、監査報告書を作成する『監事』
しかも、これらの機関は兼務できません。役割を分けることで特定の人や機関に権限が偏りすぎないようにするためです。
評議員会が大きな方向性を確認し、理事会が実際の運営を進め、監事がその運営をチェックするという関係イメージです。名称は異なりますが、一般事業会社の取締役(会)・監査役(会)などと似ていて少しは身近に感じられるのではないでしょうか?
こうした機関設計に加え、一定規模以上の法人には外部の会計監査人による監査も求められるので、内部のガバナンスと外部からの監査、この両面から法人運営の透明性を高める仕組みになっています。
社会福祉法人会計は二つのレンズで見る会計
社会福祉法人会計は、皆さんが会計士受験のために学んできた企業会計と異なる点が多くあります。
私も担当した当初は、正直に言うとかなり戸惑いました。
知っているはずの会計なのに、見ている景色が少し違う。そんな感覚でした。
代表的なものが『1取引2仕訳』です。1つの取引について、資金の動きを見るための『資金収支仕訳』と事業の成果や財政状態を見るための『事業活動仕訳』の2つで整理します。
例えるならば、1つの出来事を『お金の流れ』というレンズと『事業活動の結果』というレンズの両方から見るようなものです。慣れるまでは頭の切り替えが必要ですが、仕組みがわかってくると、法人の実態が良く分かるようになります。
また、社会福祉法人会計は、資金の範囲の捉え方も企業会計上のキャッシュ・フロー計算書とは異なります。単に現金預金を見るのではなく、流動項目を中心に特有の考え方で整理する必要があるのです。
社会福祉法人の監査の担当が決まった後、こうした違いについて問題集を3冊解き、受験生に戻ったような気持ちで勉強したことを今でも覚えています。制度や通知を確認しにいく場面も多く、常に情報をアップデートする必要があります。
大変さはありますが、知らなかった仕組みが少しずつ理解でき、判断できることが増えていく過程には学びが尽きません。一般事業会社とは違う世界に触れるからこそ、会計士としての視点や判断軸が少しずつ磨かれていく感覚があります。
このような経験は、
社会福祉法人の監査だけにとどまらず、次の挑戦にも少しずつつながっていきました。
経験が次の挑戦につながる環境
私のキャリアを振り返ると、きれいな一本道というより、いくつもの道を歩きながら少しずつ景色が広がってきたように感じます。
上場企業の監査、IPO業務・コンサルティング、投資法人、そして社会福祉法人の監査。業務ごとに見る数字も、向き合う論点も、クライアントとの会話も少しずつ違います。その違いに戸惑うこともありましたが、振り返るとその一つひとつが今の自分の土台になっています。
例えば、上場企業の監査で培った財務情報を丁寧に読み解く姿勢は、社会福祉法人の監査でも大切になります。反対に、社会福祉法人の監査で培った『事業の背景や現場の実態を理解する姿勢』は、どの監査にも通じる大切なものだと感じています。
太陽には、特定の部門に固定されず、いろいろな分野や業務に関われる『部門レス』という働き方があります。私自身も前述のとおり、幅広く違う世界に触れてきました。その一つひとつが今の自分の土台になっています。
実際に、社会福祉法人に限らず、非営利法人全般にもっと関わりたいと伝え続けたことで、今度は国立大学法人の監査にも関わる機会を貰えました。社会福祉法人とはまた違う公益性や制度の世界に触れられることに、今からとてもワクワクしています。
そうした挑戦を支えてくれるのが、太陽の風通しのよさです。
専門分野の異なるメンバーに相談しながら、知見を持ち寄れる環境があり、「それならこの人に聞いてみよう」「前に似た論点があったよ」と声をかけてもらえることもあります。新しい分野に向き合う時でも、一人で抱え込まずに進められることが心強さにつながっています。
さいごに
会計士のキャリアは、思っているよりもずっと自由で、幅があります。
上場企業の監査に留まらず、IPOや投資法人など、様々な専門領域があり、そして、社会福祉法人のように、公益性の高い分野で信頼を支える道もあります。
私自身も、その時々の状況に向き合いながら、育児休業からの復帰、時短勤務、主査への挑戦、社会福祉法人の監査への関心…と、一つずつ選択を重ねてきました。振り返ると、そのどれもが今の自分につながっています。
「専門性を広げたい」
「社会に近い監査に挑戦したい」
「ライフイベントを経ても自分らしく成長したい」
そんな思いが少しでもあるなら、太陽という選択肢をぜひ知っていただきたいです。多様な業務に触れ、仲間と知見を持ち寄りながらも、自分なりのキャリアを育てていく。そのような働き方に興味を持ってくださる方と、いつか一緒に働けることを楽しみにしています!



