RECRUIT BLOG リクルートブログ
2024.09.06

色んな業種を見る意義②

皆さん、こんにちは!
太陽監査法人 リクルートブログ担当です。

今回は、
色んな業種を見る意義①に引き続き、改めて色々な業種を見る意義について、受験生の皆さんが今後のキャリアを考えるうえできっと役に立つトピックスをもとに、スタッフの青木さんと、シニアマネジャーの本田さんに対談してもらいました。ぜひ、お読みいただければと思います!


<トピックス>

  1. なぜ色々な業種を同時に見ることが良いのか?
  2. 色々な業種を見ると、とても大変そうだし、混乱してしまわないか?
  3. 別の業種に移ると、これまでの経験が生かせなかったり、周りから良く思われなかったりしないのか?
  4. 一つの業種に絞った人には、結局かなわないのでは?中途半端になってしまわないか?
  5. 特定業種に絞らない会計士のバリュー・ニーズはあるのか?

<自己紹介>


(青木)
皆さん、こんにちは!2021年12月に入所した青木です。
これまで主に、多国籍の製造業を営む上場企業の監査業務を中心に、IPO業務や社会福祉法人の監査など様々な業務を経験し、現在は入所3年目で任意監査とIPO準備会社の主査も担当しています。また、リクルート活動(主にイベントの運営)にも関与しています。

リクルートイベントでは、
受験生の皆さんから『色んな業種の監査業務を同時に行うこと』に関する質問をよく受けます。
そこで、今回の対談を通じて、皆さんの疑問を解消していけたらと思います。
よろしくお願いします!


(本田)
皆さん、こんにちは!シニアマネジャーの本田です。
私は入所10年目になりますが、これまで情報通信業・製造業・広告業・宿泊業・小売業・サービス業etc…、様々なクライアントの監査業務を経験してきました。
また、グループ会社である太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社(GTA)にも出向経験があり、M&Aのコンサルティングやベンチャー企業の支援、IFRS導入支援なども行っていました。

現在は、職員の業務割当を決めるアサインメント担当や、職員個々の成長をサポートするコミュニケーション担当、監査品質管理関連の業務も担っています。
今回の対談では、これまでの実際経験から得られたことについて、皆さんにお伝えしたいと思っています。よろしくお願いします!

なぜ色々な業種を同時に見ることが良いのか?


(青木)
早速ですが、対談をしていきたいと思います。
色んな業種を見る意義①にあるように、太陽の特徴として、様々な業種を経験できることが挙げられています。
特に “若手年次の最初のうち” こそ、色々なことを経験しておくべきと謳っていますが、本田さんはこの点について、どうお考えでしょうか?

(本田)
私が皆さんに多様な業種を同時に見てほしい理由は、「多業種を見ることで、会計士としての “自分なりの軸” が身につきやすい」と考えているからです。

この “自分なりの軸” は、“会計士としてのコア” と言い換えてもいいかもしれませんね。
つまり、
会計士としての中核となる考え方を身に付けるができれば、自分がこれまで経験していないことに対して「どのように対応すればよいか?」を、自分で考えて導くことができるようになります。

(青木)
「多業種をみることで、会計士としてのコアが身につきやすい」という話は、とても興味深いです。現代は経営環境の変化が激しく、会社の事業内容も複雑化していることを考えると、確かに『色々なことに対応できる軸を持つ会計士』は、非常に価値がある気がしますね。

ただ、少し疑問に思うのは、コアの形成にあたって、なぜ一つの業種を深く知ることでなく、多業種を見ることの方が良いのでしょうか?
正直、色々見てしまうと、どれが正しいのか分からなくなってしまいそうな気もしてきますが・・・。

(本田)
そうですね・・・
突然ですが、青木さんはお味噌汁、好きですか?(笑)

(青木)
お味噌汁ですか?
そりゃ好きですけど、突然どうしたんですか?

(本田)
高級料亭でプロの料理人が作った極上の一杯と、自宅でしっかり出汁取りから作った一杯と、インスタントカップと、さらには味噌をお湯に溶かしただけのもの・・・など、色々あると思うのですが、当然ながら味は全部違いますよね。
ただ、どれも「ごはんの時に味噌汁を食べる」というルールがあった場合には、どれも条件を満たしているワケですよね。

(青木)
お湯に溶かしただけのものを、私は味噌汁とは認めませんよ!


(本田)
上の例は冗談ですが、これが示唆するところは、
同じように見えるものであっても、作る人や場が違えば、その中身は実は全く違うということです。

(青木)
よかった、ようやく唐突な流れから元に戻ってきたようで、一安心です(笑)
では改めて、どういうことでしょう?

(本田)
会計基準は、一部の業種別に特化した領域のモノを除き、基本的なベースはどの会社にも同じものが適用されます。
ただ、業種が異なれば、そのクライアントへの適用方法は異なってくることがあり、うまく適用していくために求められるクライアントの内部統制の在り方も異なってくることがあります。
そのため、一つの業種だけをみているときは、その業種特有の慣習・会計処理について「それが当たり前のことなのかな」と思っていたことが、色々な業種を見ていくと、実はその慣習・会計処理が特殊なものであったということに、気が付いてくることがあります

私がJ1のときに関与したクライアントの一つとして、小売業がありました。
その企業では、本社の店舗管理者が各店舗からの売上現金・在庫などの報告を日々チェックしていて、多数の人員が投入されていたのですが、その時はそれが普通のことだと思っていました。
ですが、別のメインで関与することになったソフトウェア受託開発業のクライアントでは、現金販売がなく、在庫もほとんど持たない企業でしたので、その管理人員数は小売業のクライアントと比較して圧倒的に少なく、驚いた経験があります。

(青木)
なんとなく分かる気がします。
つまり、「業種ごとに重要な勘定科目や内部統制が全然違う」ということでしょうか?
小売業では現金管理・在庫管理が重要なので統制がすごくしっかりしているけど、それらの重要度がそれほどでもない業種であれば、必要最低限の統制となっているのだと。

では、逆にソフトウェア受託開発業だと、別の重要な分野にしっかりとした統制があるのでしょうか?

(本田)
そのとおりです。
ソフトウェア受託開発業だと、個別受注契約により開発が行われることから、プロジェクト別の個別原価管理が非常に重要となりますが、これは小売業だと、なかなか接することがないかもしれませんね。

このように、
色々な業種を見ると、それぞれの業種の特徴が分かってきますし、反対に共通する部分も同時に分かってくるのです。

(青木)
なるほど。
多業種を見るにつれて、個々人の “普通” という感覚が、業種による偏りのない感覚になっていくのですね。

(本田)
業種を超えた “普通” の感覚があると、様々なクライアントに対して重要な項目を見極め、「どこまでの管理・処理が求められるのか?」という点が分かってくるので、適切なアドバイスができます。

例えばクライアントから、

「現金管理って普通はどうやっていますか?」

と聞かれた際に、

「最も現金管理が重要な小売店であれば、こうやって管理していますが、貴社の状況やリスクを考えたら、ここまでは少なくとも対応しておくべきではないでしょうか?」

と答えられると、
個々の会社の実態に応じた適切な水準の指導的機能が発揮できますよね。

(青木)
そう聞くと、業種を超えたものさしをもっている会計士は、確かに価値がありそうです・・・!

色々な業種を見ると、とても大変そうだし、混乱してしまわないか?


(青木)
リクルートをしていると、よく受験生から、
「多業種を同時に経験するとなると、それぞれの業種についてナレッジを溜めるのがハードではないか?」と聞かれます。これに関しては、いかがでしょうか?

(本田)
実際は混乱しないと思います。
というのも、多業種を “同時に” 経験するとは言いますが、実際は「ある程度の期間を取って、色々な業務を行っていく」といったイメージなので、初めは一日の中にいくつものタスクが同時発生するようなものではないため、「マルチタスクで混乱する」ということにはなりません。
また、単なる知識ではなく経験として身になっていくものなので、混乱することはまずありません。

(青木)
言われてみれば、私もこれまでの業務を振り返ってみると、複数業種のクライアントを担当していても、「それぞれのクライアントに関与するときは、1~2週間といった期間で、その業務に集中する」というサイクルを繰り返すので、ナレッジを溜めることができた・・・という感じですね。

最初はいろいろ業種が違う現場に行くと、
新しいことばかりで大変と思ってはいたのですが、実際はそこまで大変ではなかったような気がします。


(本田)
業種が違うといっても、基本となる監査手法・会計ルールは共通していますからね。特にスタッフの段階では、様々な業種のクライアントに関与することになっても、共通した手続を行うことが多く、業種特有の部分は、その都度チームの主査から教えてもらう、という形です。

(青木)
スタッフのうちは、それぞれの業種特有の部分にも触れながら、まずは監査の基本を習得していく。
そして、主査になるにつれて、担当する業種特有の論点に精通する、といったイメージですね。


ということは、
「多業種のナレッジを蓄積する」といっても、その数は主査に近づくにつれて、絞られていくということでしょうか?

(本田)
そうですね。
あまり薄く広くなりすぎても、自分のコアを形成するようなナレッジは身につかないのも事実ですし、同時に実施する数にも、時間は皆平等ですので制約もあります。

ただ、「ナレッジを蓄積する」といっても、当然ですが自己学習によって知識を身につけられる部分もあるので、そこは本人の努力次第だと思います。士業である以上、常に自己研鑽は必要ですし、専門書なども色々あるので、本当に本人次第ですね。
その中で、自分が「コレだ!」と思うものがあれば、一つの業種に絞って特化していくことも、もちろん素晴らしい選択だと思います。

(青木)
それぞれが、業種を好きに組み合わせることでキャリアを形成できるということですね。

別の業種に移ると、これまでの経験が生かせなかったり、周りから良く思われなかったりしないのか?


(青木)
ところで、
「希望業務を途中で変えたい・・・」と思った場合に、新しい業務に対する働きにくさ等の障壁はあるのでしょうか?

(本田)
それは全くありません!
太陽は、IPO・金融・パブリックといった業種・業務ごとに部門を設けていません。つまり、業務をシフトする前後で、働く組織のカルチャー・雰囲気が違ったりすることはないので、そういった障壁がないのです。


むしろ、法人として「新しいことに挑戦する人を応援する風土」があるため、希望を伝えることに対する障害はありませんので、安心してください。
「こんな業種に行ってみたい!」などの話は、積極的にコミュニケーションして、出来る限り反映できるようにしています。


(青木)
確かに、太陽は社会人経験を経てからの入所者など、色々な業務経験を経てきた人も多く、自由というか、個性を尊重するような風土を感じます。
同期を見ても、学生非常勤から一般事業会社での経験年数豊富な人まで、色々な人がいますね。

(本田)
そのとおりです。
そうやって毎年の定期入所も繰り返しているので、年齢と年次が一致しておらず、変な先入観がなく、その人のバックグラウンドを含めて「個人個人をしっかり見る」という雰囲気がありますからね。

(青木)
そうですね。
だからこそ、私も入所1年目から、これまで多様な経験ができているのだと思います。
これからも、自分の描くキャリアに応じて積極的に希望を伝えていきたいと思います!

一つの業種に絞った人には、結局かなわないのでは?中途半端になってしまわないか?


(青木)
受験生からの少しネガティブな意見として、

「初めから業種を絞って専門的に仕事をしてきた人には、やはり将来的にかなわないのではないか?」
「多業種を経験した結果、中途半端な人間になってしまうのはないか?」

といったような質問をお受けします。この点に関しては、どう思いますか?

(本田)
ある一つの専門分野に特化した方に対して、
その分野でしゃしゃり出て「私の方が知っていますよ!」なんて言うつもりは全くないです(笑)
ですがこれは、どちらの方がすごいとか、かなう・かなわないという話ではないと思っています。

私の武器は、先に話したように『事実を把握し、規範・ルールに基づきながら、様々なことに対応できる思考回路を持っていること』だと思っていて、クライアントから新しいことを含む様々な相談を受けた際に、あるべき姿をしっかりと考え、「他の業種では、どう管理・処理しているのか?」といった知見をもとに、クライアントと相談しながら、適切な判断をサポートし、正しく進めるようにするところだと思っています。
要するに、目指している方向が違うと思います。

(青木)
つまり、例えれば、特定領域の分野に特化した人の武器は専門知識、多業種を経験する人の武器は幅広な対応力であって、そもそも競技が違うから、比べられないということですね。

では、
「どれも分かっていない中途半端な状態にはならない」ということでしょうか?

(本田)
中途半端になるかどうかは、結局その人次第だと思っています。
初めから専門分野を絞ったとしたって、自分が開拓者ではない領域であれば既にその道の先駆者がいるわけで、同じ分野を目指す人も少なからずいるわけで、努力をしなければ中途半端になってしまいます。

太陽のように多業種を経験するにしても、
それぞれの業務で「何が本質的に大事なのか?」と考えながら業務をしなければ、結局自分のコアとなるナレッジを上手く集積できず、中途半端な人材になると思います。
また、特にキャリアの最初の段階においては、何の予備知識もない中でいきなり専門性を目指すよりは、好き嫌いをせずに色んなことを経験し、その中で自分の好きないくつかを残して伸ばしていった方が、本人にとっても面白いと思います。

(青木)
確かに、どういう方向性であっても、力の入れ具合によって、中途半端になるかどうかが決まる気がします。これは「どこに行ったから大丈夫」とか、そういうような話ではないですよね。

(本田)
結局は「どのような会計士になりたいのか?」の違いだと思います。
私は、色々な業種を見ることの方が単純に楽しいと思いましたし、業種によってどのような仕組みがあり、それに対してどのように監査が行われていくのかを、できるだけ多く知りたいという思いがありましたので、多業種のナレッジを積み重ねて価値を発揮していく道を選びました。

また、経験を積み重ねていき、例えば監査法人においてパートナーやマネジャーとなるような段階となれば、同時に多くのクライアントに関与するようになっていきます。さらには、次々と新たなビジネスも生まれてくるワケです。
「様々なことに対応できるような人になれたらな」という将来的な広い視座を考えてみれば、最初から決まった業種にこだわらず、各ビジネスにおける “キー” となるポイントを素早く理解し、グッと掴まえる能力を鍛えていくことが、より自分の活躍の幅を広げていくことができるのではないか、と考えています。

(青木)
すごく納得しました!
業種を超えた経験によるナレッzジを蓄積・発揮していくことができるというのは、とても魅力的に感じます。


また、
「色んな業種を見た上で、自己の専門分野を確立したいと思ったら、その時はそこに特化していけばよい」と言うこともできますね。

(本田)
そうですね!
実際、多様な経験をしてきた後に専門分野を確立し、その分野の先進となって活躍されている方も、多くいらっしゃいます。そのような働き方にシフトすることができるのも、太陽の良さと言えますね。

特定業種に絞らない会計士のバリュー・ニーズはあるのか?


(青木)
さて、最後になるのですが、そもそも『特定業種に特化しない、いわゆるゼネラリスト型の会計士』は、実際に社会的な需要があるものなのでしょうか?

(本田)
もちろん、ニーズはありますよ!
もし転職するとなった場合でも、基本的に会計士に求められるのは、高度な会計知識と、それをベースとしたプロジェクト管理能力が備わっているかどうかなので、
何かその時点での専門的な知識を持っているかどうかよりも、例えば、上場企業の監査で主査経験があるかどうか?マネジャー経験があるかどうか?しっかりとした会計や管理に関する知見を持っているか?といったことの方が、重要視されると思います。

(青木)
同じ職階(マネジャー、シニアスタッフなど)の場合に、専門化しているかどうかで差は生じますでしょうか?

(本田)
専門特化していると助かる場合もありますし、「この人は何聞いても答えてくれる」という人がリスペクトされる場合もあります。
なので、幅広い知識を持って、しっかりと判断軸を持っている幅の広い会計士は、かなり社会的な需要があると思います。

(青木)
なるほど。
経営環境が複雑化するほど、柔軟に対応できる会計士のニーズは高まっていきそうですね。
また、IT化・国際化など、会計士に求められる能力が時代に合わせて変化していく中で、将来どのように活躍するにしても、「会計士としての自分なりの軸を持っている」ということが、価値を発揮していく上では、重要になってくる気がします。

いかがでしたか?
皆さんが今後のキャリアを考えるうえで、何か少しでもヒントになったのであれば、幸いです!