皆さん、こんにちは!
太陽監査法人 リクルート担当の宮本です。
会計士試験に合格してすぐに太陽監査法人に入所し、これまで、上場会社・IPO準備会社・ファンドの監査業務、その他にも国際業務など、様々な業務を行ってきました。家族との時間を一番に重視することがモットーの2児と豆柴の父です!
試験を受験された皆さん、大変お疲れ様でした。
一区切りがついて羽根を伸ばしたい頃かとは思いますが、皆さんのこの先長いキャリアにとって、最初にどんなスタートを切るかは、非常に大事です。
ですので、より良い就職活動に向けて是非、もうひと踏ん張りしましょう!
さて、今回は“監査”をテーマに、お話をさせていただきます。
私は、いつも受験生の皆さんに対して、
監査業務を最初に経験することを必ずオススメしています。
公認会計士は、監査以外にも「多種多様な業務を行うことができる」ということを聞き、期待に胸を膨らませている方もたくさんいると思います。
しかしその一方で、こんな方もいらっしゃるのではないでしょうか?
- ファーストキャリアを監査法人にすることに対して、何らかの悩みを抱えている
- そもそも「監査業務を経験しておく意義ってなんだろう?」と、思い始めている
- 自分はどんな会計士になりたいのか、見えてこない
このブログでは、公認会計士の独占業務である“監査”とはどのようなものなのか?そして、私が「なぜ監査業務を最初に経験することをオススメしているのか?」という点について、説明していきます。
今後の就職活動において、ご自身のキャリアを考えるうえで『監査業務の経験に関する迷い』が生じたときは、ぜひ「原点に立ち返る」つもりで、このブログを思い出していただければと思います!
監査とは何か?
監査の定義については、受験生の皆さんには、もはや説明不要かと思います。
ざっくり言うと『会社の決算書を保証する業務』ですね。また、公認会計士の業務は多種多様ではあるものの、前述の通り「監査は公認会計士の独占業務である」という点もご存じかと思います。
少しだけ、監査の社会的な意義について掘り下げてきましょう。
皆さん、“公認会計士法第1条” は、覚えていますでしょうか?

ここでいう「投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与する」とは、具体的にどういうことか?一つ、例を挙げて説明しましょう。
<事例>
1.(A社で誤謬が発生する)A社では、大口取引先であるB社の債権回収が滞留しているにも関わらず、経理担当者がこれを適切に把握できておらず、貸倒引当金を計上しなかった
⇩
2.(A社で経営判断を誤る)A社の経営者は、B社の財政状態が悪化していることを把握しないまま取引を継続する
⇩
3.(B社の売掛金が貸倒れ)B社の売掛金は回収出来ず、資金繰りが苦しくなる+経営判断を誤ったことで、財政状態・経営成績も悪化する
⇩
4.(A社が倒産)業績が悪化したA社は、銀行からの融資も受けられなくなり、倒産する+多くの従業員とその家族が、路頭に迷ってしまう
⇩
5.(他社へ波及)今度は、倒産したA社に対する債権をもっていた他の会社の資金繰りも苦しくなる
※ 以降、3.から繰り返し・・・
これはあくまで極端な例えですが、
このように、
会社の決算書に何か一つでも重要な不正又は誤謬があっただけで、会社が倒産し、連鎖的にいくつもの会社が影響を受け、日本経済に甚大な被害を与える可能性すら孕んでいるのです。
もちろん、経営者のみならず、会社の実態を見誤った投資家についても同様に被害を受けることになります。ですから、公認会計士が監査を行うことで、このようなことが起こらないようにしているのです。
公認会計士という職業は、医者や弁護士のように華々しくドラマなどで取り上げられることが多くないと思います。
ですが、不正や誤謬により多くの人が被害を被ってしまうような事態を避けるため、日本経済を土台から支える『超』重要な役割を担っているのです。
そして、私たち会計士は、公認会計士法第1条『公認会計士の使命』を骨の髄まで体にしみこませ、日々、監査を行っているワケです。
監査の魅力とは?
「監査の仕事は地味だな」と思う方は多いかもしれません。
確かに、監査業務はPCに向かってデスクワークをする時間が多いことは、否定しません。
ただ、もしデスクに向かって『机の上の数字を追いかけているだけの業務』だとイメージされている方がいるようでしたら、それは 大間違い です!!!
私たち公認会計士は、会社の決算数値や関連する取引・事象と日々格闘しているわけですが、
会計士が見ているのは、ただの数字ではなく会社そのもの、すなわち『ビジネス』なのです。
なぜかというと、
会社のあらゆる事業活動は、最終的には全て決算書の中に数字となって集約され、私たちはその数字を監査しているからです。
「数字を見る」ということは、会社のビジネスを見るということに他ならないのです。
監査というものは、
- 会社がどういう強みを持っていて、
- どうやってお金を稼ぎ、それを何に投資し、
- そしてどのような将来のビジョンを描いているのか?
ということについて、誰よりも(会社内部の人間よりも)理解する姿勢で臨まなければなりません。
そうすることで、初めて決算書の数字の意味が分かるのです。
また、もし皆さんの周りで「監査がつまらない」と言っている友人や先輩がいたら、これも 大間違い だと思います!!!
- 色々な会社に出向き、
- 経営者と対話し、
- 会社の従業員でさえ見ることが許されない重要な資料を閲覧し、
- 経営者と同じ目線に立って会社の将来を展望する。
そんなことができる唯一無二のこの仕事が、
つまらないなんてことは絶対にありえない!
と、私は思っています。
とは言え、監査業務の中で感じる“やりがい”というものは、やはり人によって違うと思います。
参考までに、私が日々の監査業務の中で密かに感じているやりがいを紹介しましょう。
私は「良い監査には付加価値がある」と信じて、監査をしています。
そもそも、監査業務は『批判機能』という側面を持つ仕事であるゆえ、会社の人からすれば、最初から友好的な感情は持ちにくいという特徴があり得ます。また、意見が対立して激しい議論になることもよくあります。
しかし、私は例え会社と対峙することになっても、
「良い監査は、会社にとって必ずプラスになるのだ」という強い信念を持って監査するようにしています。
すると、散々対立をした相手でも、後になってから、
「あの時、先生の言うことを聞いておいて良かった」と感謝してくれることがあります。
そんなときに、自分の力で監査に付加価値をつけ、会社の良い成長に寄与できたことを実感できます。
私が監査業務の中で感じるやりがいは、そういった「自分自身と会社の成長を肌身で感じられる」ところにあります。
良い監査ができる会計士とは?
このように、良い監査ができれば仕事は楽しくなるし、会社からも必要とされるはずです。
また、会社から必要とされていることを実感できれば、仕事はもっと楽しくなるはずです。
皆さんから見て、輝いて見えるような会計士は、きっとこの良いループの中にいる会計士なのだろうと思います。
では、どうしたら良い監査ができる会計士になれるのだろうか?という点についても、触れてみましょう。
私がまだ1年目か2年目くらいの頃、尊敬する先輩がこんなことを言っていました。
「監査ほど能力に差が出る仕事はない」
これを聞いた時は、「さすがに大袈裟だな(監査業務は、何か個人の成績を示す指標などがあるわけではなく、最終的な成果物は監査報告書のみだから…)」と思ったのを覚えています。
しかし、10数年後の今は、先輩のあの言葉の意味が良く分かります。
確かに、監査は驚くほどに差が出る仕事だと、私も思います。
ここで、「監査は“会計知識”を武器に戦うものだから、会計知識の豊富な人が質の高い監査を提供できるのかな」と思う方もいるかもしれません。
しかし意外にも、監査は知識だけでなく総合的な能力が大変問われる仕事です。
むしろ、会計士が会計知識を備えていることは当たり前であって、デキル会計士になるために必要な要素は、もっと違うものであると、私は考えています。
さて、ここでデキル会計士になるために必要な要素について、一つ一つ説明すると長くなるので、私が一番大事だと感じている点についてのみ、お話しましょう。
私が一番大事だと思うポイントは、何と言っても経験です。
例えばですが、
コンビニでカップラーメンが1,000円で売っていたとします。
これを見たら皆さんは「高い!!!」と、思いますよね。
このように、見た瞬間「高い!」と直感が働くのは、実は皆さんが買い手として、コンビニに並んでいるカップラーメンを見たことがあるからなのだと思います。
一方で、カップラーメンの原価は100円ですと言われても「へぇ、そうなんだぁ…」と、なりますよね。
それは、皆さんが作り手側に回ったことがないからです。
つまり、先ほど「監査とは、会社のビジネスを見るものである」という点を述べましたが、
会社のビジネスを正しく理解するということは、経験を積み重ねて初めて成し得ることなのです。
その架け橋として、色々な業種の監査を経験することは確実にスキルアップへとつながりますし、若手のうちからこのような経験を積んでおくことは、あなたの一生モノの財産になること間違いなしです!
皆さんも、監査論で『知識と経験』というワードを習ったことがあるかと思います。
この『経験』というのは、とても深い意味が込められているのだと、今はよく分かるようになりました。
さいごに
ここまでのお話で、監査業務は「他のどんな仕事でも得難いような貴重な経験ができる業務である」という点は、伝わりましたでしょうか?
ココで得られる経験こそが、私がファーストキャリアで監査をすることをオススメする理由です。
これはこの先、監査という仕事から離れ、コンサルタントや起業をしようとしている方にとっても同様です。
この経済社会において、会計関連のサービスを提供しようと思ったら、公認会計士の右に出るものはいません。それはきっと、
私たち公認会計士が、“監査” という自己の専門性を発揮する場を持っているからではないか?
私は、そのように考えています。
今の監査業界では、リモートワークの普及やAIの導入などが進んでおり、まさに過渡期にあると言えます。
このような時代に公認会計士となる皆さんは、今後、どのような公認会計士が必要とされるのか?ぜひ、真剣に考えてみて欲しいと思います。
その際、明確な答えというものはありません!
「生き残る」公認会計士になるためには、どのようなキャリアを描く必要があるのか?
皆さんの中で納得のいく答えが見つけられることを、切に願っています!